武家社会 2019 5 3
「男性天皇(男系男子)が皇室を守った」
天皇制の歴史は、諸説ありますが、2000年ぐらいはあるでしょう。
さて、そこまで遡るのではなく、
タイムマシンで、1000年から500年ぐらい前まで遡りましょう。
この時代の多くは、戦乱の時代だったでしょう。
しかし、その戦乱を平定して、全国統一を達成できれば、
強大な政治力、軍事力、経済力を掌握できます。
このような最高権力者が皇室をどう思うか。
天皇制を廃止して、自分が王朝を作るか。
これでは、中国の歴史になってしまいます。
しかし、いくら最高権力者でも、それはできなかったでしょう。
天皇は、日本神道の中心だったからです。
日本の宗教の最高神官だったからです。
当時の人たちは、信仰心が篤かったのです。
次に考えるのは、もし女性天皇だったら、
その女性天皇と結婚を考えるでしょう。
自分は最高権力者、妻は天皇ということになります。
これは、やがて、息子や娘が天皇ということになります。
こうなってしまっては、実質的に新しい王朝を作るようなものです。
しかし、「天皇は男性天皇(男系男子)」という制度では、
いくら最高権力者でも、自分の娘を皇室に送り込んで、
ひたすら孫が誕生するのを待つことになります。
しかし、生まれてくる孫が男性とは限らないのです。
そんな気の遠くなる話を独裁者は我慢できません。
独裁者の不安は、「独裁は長く続かない」という法則を知っているからです。
だからこそ、最高権力者は、皇室を脅して、
最高の官位や官職を手に入れて、国を支配したほうが合理的だと考えるのです。
歴史を振り返れば、皇室に経済力もなく軍事力もなかったのに対して、
時の権力者は、経済力も軍事力も掌握していたというのが、
武家社会だったでしょう。
さて、現代に戻りましょう。
現代においては、国家権力を立法、司法、行政の三権に分けていますので、
独裁者は出現しないようになりましたが、
経済の高度な発達によって、国家を超えるような規模の企業が多数出現しています。
皇室の政治利用はなくても、「経済利用」はあり得るかもしれません。
もちろん、事業が好調ならば「経済利用」はないかもしれませんが、
一族の事業が傾くと、皇室が金銭的な問題に巻き込まれてしまうかもしれません。
あるいは、「宗教利用」もあり得るかもしれません。
実は、天皇は、今でも日本神道の中心であり、主宰者でもあります。
天皇は、日本神道を象徴しているのです。
普通は、夫婦の宗教が違っても、特に問題ありませんが、
熱心な信者では、家庭内で「宗教戦争」が起こるかもしれません。
もちろん、このような問題は、
「男性天皇」でも「女性天皇」でも起こり得る問題であり、
要するに、皇室は、結婚相手を探すのに苦労するということです。
つまり、「自由恋愛」は無理だと思います。
さて、話がそれました。
多くの国民は、「悠仁天皇までは大丈夫だ」と考えているでしょうが、
問題は、その先です。
国民も少子化ならば、皇室も少子化になっています。
これで、男系男子にこだわると、皇室の危機がやってくるでしょう。
さりとて、サウジアラビア方式は取れないでしょう。
サウジアラビアでは、王子が少なくとも数十人はいるでしょう。
「一夫多妻制」のイスラム国家だからこそ、そうなっているのです。
誰もが「天皇制は、少なくても50年以上は大丈夫だ」と思っているかもしれませんが、
天皇制の歴史が2000年だとすると、50年は瞬間的に過ぎてしまうでしょう。